司馬遼太郎さんの作品は大好きなのですが、
あまり人にお勧めしたことはありません。
理由は、司馬さんには独特の「史観」があり、
その人に司馬史観が「史実」として捉えられる可能性を懸念するからです。
でも、この本は全ての日本人に読んで欲しいですね。
いくら坂を上っていっても、決して辿り着くことができない雲。
100年たった今、日本は限りなく欧米諸国の近い場所まで到達しました。経済力と軍事力では最高水準です。
しかし所詮は極東の島国。アメリカの従属同盟国。
国際的な立場としては、やはり「下」なのです。
このままいけば非常任理事国というポジションさえも剥奪されます。
細かいニュアンスは敢えて避けますが、
乃木希典の旅順攻略作戦。
児玉源太郎のコサック部隊との攻防。
明石元次郎のロシアでの諜報活動。
敵艦を「全滅」させるためのT字戦法考案。
国連なんていう救済機関がない時代だけに、負ければ日本は終わりでした。
結果として雲には届いていませんが、
彼らの「必死さ」がなければ日本は存在しなかったはずです。
当時の日本人が口々に言った臥薪嘗胆。
この精神を教えてくれる作品です。

坂の上の雲〈8〉 (文春文庫)
ラベル:司馬 遼太郎