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2010年02月11日

終の住処 磯崎 憲一郎

第141回芥川賞

たまにある会話も改行無し。文字の行列。文字に押し出されるように読み進めると、いつのまにかエンディング。スタートから20年もの月日が流れ、彼も妻も50過ぎ。最後の締めが印象的。

−この家でこの部屋で、これから死に至るまでの年月を妻とふたりだけで過ごすことを知らされた。それはもはや長い時間ではなかった。−


今までに流れた時間を考えると、「もはや長い時間」ではないのだろう。ページ数でいうと何ページ分か(笑)

確かに毎日毎日過ぎていき気がつくと一年、また一年つみかさなってる。
嬉しいこと悲しいこと大変なこといろいろが逐一過去になりつみかさなっていく。

うれしいこと、楽しいこと、悲しいこと、どんなドラマティックな出来事があっても、時間の流れは基本同じ。

過去があって、今がある。
でもそれぞれの過去を語ることなく、強弱つけず、人に流れる時間のスピードに忠実に(同じスピードで)文章におこしていけば、確かにこんなかんじになるのだろう。

毎日ドタバタしていても、それが過去になると
この本のようになるのかと、感じた。

面白い本、
読後、余韻が残る作品です。

「過去においてはただの1日でも、1時間でも、1秒でも、
無駄に捨てられた時間などは存在しないのだから。
お前が今この時間を、この1秒をあきらめることによって、
お前は永遠の時間をあきらめることになるのだ」

「老いて、この世から去る間際になれば実感する日がくるだろうが、
気が遠くなるほど長い、ひとりの人間の一生といえども、
いま目の前の一瞬よりも長いということはないのだ」

終の住処




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2010年01月29日

鉄の骨 池井戸 潤

なかなか面白かった。
中堅ゼネコンに入社四年目の平太が、現場からいきなり業務課に異動するところからストーリーは始まる。
そこは必要悪である談合をしながら仕事を受注する場であり、正義だけではやっていけないジレンマ、社会人になってずっとつきあってきた取引先銀行に勤務する彼女とのかかわりが絡んでくる。
地下鉄工事の談合での攻防、彼女が仕事の出来る職場の先輩とのかかわり、もう一つの軸である検察の動きは面白く読めた。
そして彼女、萌の最後のジャッジにほっとした。
レッドゾーンよりピリピリしなくて読めたが、直木賞にはややきつかったと。。
映像化にちょっと期待。

不景気の中、目先の利益を出そうともがく建設業界。
業界全体の馴れ合い体質。
談合という温床。
新旧体制の社内闘争。

それを取り巻く外部環境。
談合を食い物にする政治家。
追い討ちをかける銀行の冷ややかな態度。
官製談合の摘発に目を光らせる特捜。

そんな中、仕事・プライベートでもがく中堅ゼネコン4年目若手社員。

最後まで展開は目が離せなく、読み応えはある。



鉄の骨


ラベル:池井戸 潤
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2010年01月28日

犬はいつも足元にいて 大森兄弟

46回文藝賞受賞作

王様のブランチで紹介されていたので読んでみました。
看護師のお兄さんと会社員の弟さんという兄弟二人での
共作。
どちらかが、プロットを・・・という役割分担があるのではなく、
本当に交互に交換日記のように書いています。
これは珍しいし、芥川賞の候補作ということで、今注目の
お二人です。

両親が離婚して、母親に引き取られた主人公。父親が残した
犬、クラスメイトとの奇妙な関係。
うーん・・・面白くなかったです。
話題性と面白さは全く別物。

犬が穴を掘ると、得体の知れない肉が必ず出てくるのですが、
それについてはっきりしないまま終わっています。
なんという思わせ振り。一体何が言いたい作品なのか分から
ない。
でも、芥川賞はいつもよく分からないので、こんな感じでし
ょうか。


犬はいつも足元にいて


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2009年11月07日

ハッピーバースデー 青木 和雄, 吉富 多美

ハッピーバースデー


こんなに泣いたのはいつ以来だろうか。
人の感受性をこれほどまでに高めてくれる作品はなかなか出てこないでしょう。
決して上手い文章ではありませんしストーリーも単純です。
が、なぜか何度も何度も泣いてしまいました。

博多から京都までの新幹線の中で四回も泣いてしまった作品です。
親子、兄弟、友人など周りへの接し方が読み終えた瞬間から私は変わりました。
私自身の感受性を高めてくれただけでなく、その後の立居振舞いをすぐに変えてくれた。


小学生から大の大人までおススメです!
特に子供と子を持つ親にはぜひ読んで欲しいですね。

私はこれで素直になれそうです。

「お前、生まれてこなきゃよかったな」と言い放たれたところから主人公あすかの物語は始まります。

祖父をはじめ、周囲の人に支えられ、そしていつしか、周囲の人々を支えられるあすかに成長していきます。

作品中で、あすかの祖父がこんな表現をします。
『親と子は六億分の一の出会い。』

あすかの祖父が、あすかにたくさんヒントをくれる優しい言葉や、成長していくあすかの魅力に、
「私もこうなりたいなぁ」と、心の中で思いました。

どうしても愛せない人に出会ったときに、読みたい一冊かな。

感動は喜怒哀楽全て取り揃えてあります。
とても大きな作品です。
ぜひとも。


ハッピーバースデー



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2009年10月21日

ノーフォールト(下) 岡井 崇

ノーフォールト
日テレのドラマ、女性の産婦人科医「ギネ」の原作。
産婦人科医の減少や、それに伴う過酷な医師の労働環境、頻発する医療訴訟問題に焦点を当てつつ、妊産婦を取り巻くヒューマンドラマ的なストーリーでどんどん引き込まれました!
日本は、先進国中でお産に伴う妊婦の死亡率は下がるものの、医療従事者に心身共に負荷がかかっていて、その負荷が更に現場離れを引き起こし、結果としてお産を取り扱う病院が減っているのが現状。確かに、妊婦健診の際には、先生方は大忙し、妊婦は大量に待機、って構図が・・・
お産の際にも、子宮が膀胱と癒着していたり、胎盤が異常な位置にあったり、お産の進みが悪く胎児が酸素不足になったり、筋腫や高血圧等の他の要因からも母体は影響も受けるし、私的にはお産は「自然なもの」でもありつつも、やっぱり「命かけて産みます」的なものなんだろーな、と思いました。
何かあった時に、訴訟による泥沼化を防ぎ、医師達の現場での萎縮を妨げないために、日本でも、母子共に死亡したり後遺症が残った際に保障する制度が出来たそうです。医療過誤・事故、共に、責任の有無を問わず保障されるそうです。少しずつ医療現場も妊産婦の意識も、よりよい方向に改善される事を祈ります。

ノーフォールト(下)(ハヤカワ文庫JA)

ラベル:岡井 崇
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ノーフォールト(上) 岡井 崇

ノーフォールト
ドラマ『ギネ産婦人科の女達』の原書。身体的にも精神的にも過酷な医療現場をリアルに描いている。
産科医療の現場がこんなにも過酷なものだったとは。紙面から伝わってくる緊迫感に、ただただ圧倒されるばかりでした。

読んでいるだけなのに、もう…あまりに辛すぎて、思わず頁を飛ばしてしまった部分も。でもそれ以上のことが現実なんですよね、きっと…。凄い。

今年からスタートした産科医療保障制度・・・そのきっかけとなった報告書を厚労省へ提出した医師が書いた産婦人科医のお話。

医師不足が現代社会の数ある問題の一つですが、なかでも小児科医、産科医がもっとも数が足りていない・・・その原因と思われる医師の過酷な実情がとても分かりやすく書いてあると思いました。

この問題を社会に伝えようとする著者の気持ちがとても伝わってきたように思います。


〜友子の奈智への信頼はすでに揺るぎ無いものとなっていた。この信頼は、単なる医師の診療能力への信頼と異なっていて、子供たちの人生がかかる、友子にとって最もクリティカルなこの時期に、不安と苦悩を共有してくれる伴侶への信頼とも呼べるものである。〜

〜(前略)前段の机には、一輪の菊と水の入ったコップが置かれてある。その前で立ち止まり、そうっと手を合わせる。全身が大きく揺れてきた。最前列にいる慎一と家族、その後方に並ぶ医師と看護師たちが自分に目を注いでいる。すべての視線が、“この人の死に最も重い責任を持っているのは君だ”と囁いているようにすら感じられる。〜

〜これまでの人生で最も大きな試練といえる美和子の死、これを乗り越えなければ、両親の愛情に報いることは出来ない。〜

〜何て美しいんだろう・・・
これまでの人生で最も美しい光景と感じた。青い空が見えないほどの花の房、風に揺られ舞い落ちる花片、風の匂いと土の匂い、耳を澄ませば人声の切れ目から花弁の触れ合う音も聞こえる。すべては生きているから感じることができる。〜

〜(前略)二人の死は対極にあった。穏やかな死と壮絶な死。予知された死と突然の死。医学的には救命可能な死と可能な死。(中略)手術への後悔、救命できなかったことへの自責の思い、婦人科勤務に就いてからも、これらが消えることはなかった。しかし、さやかの死を安らかにすることに力を貸せたという感触が、美和子の死への心の負荷を軽くしたことは確かであった。〜

〜『私たちは、もとより患者を傷つけようとは思っていない。患者のためにと思って夜も眠らずに働いているんだ。それなのに、結果が良くなければ、弁護士は、医者の患者に仕立て、犯罪者扱いする。それこそ不当な行為だ』〜

ノーフォールト(上)(ハヤカワ文庫JA)

ラベル:岡井 崇
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2009年09月11日

そして誰もいなくなった アガサ クリスティー, Agatha Christie, 清水 俊二

「十人のインディアンの少年が食事に出かけた 一人がのどをつまらせて、九人になった
九人のインディアンの少年がおそくまで起きていた 一人が寝すごして、八人になった
八人のインディアンの少年が…」


前回読んだアガサクリスティの作品と違って
読みやすく、物語の世界にもすーーーーーーーと
ハイっていけました

謎の招待者にそれぞれの理由で
インディアン島に招待された10人(うち
2名は使用人夫婦)だったがその10人を
つなぐものは過去における罪

そして各自の部屋に掲げられたインディアンの
歌と10個の陶器で作られたインディアン
の置物

人が1人、死んでいくごとに
陶器のインディアン人形の数が減って
いく

疑心暗鬼の中、残されていく人物たちは
誰かテキだか味方だからわからないまま
いつ迎えの船がくるとも知れずまつ

が、ときすでにおそし

迎えの船がきたときは10人とも死んでいた

もちろん、警察は調べているが奇蹟が
怒らない限り真犯人はわからない

その奇蹟の中に真犯人のメッセージが
こめられているからだ

というストーリーでした

新訳で読みやすかったせいもありますが
以前、アガサファンの母の本を借りて
よんだときは意味が全然わからない
話でしたが、やっと、これで通じました

一晩、数時間で読み終えてしまいました

大変、しっかりしてよかったです


そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)



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2009年09月04日

プリズン・トリック 遠藤 武文

「乱歩賞史上最高のトリック」
「社会派でありながら超本格」
「あなたはトリックを見破れない。そして必ず、二度読む」
って書いてある帯に惹かれて読んでみました。帯の力って偉大。

刑務所内での収容者同士の密室殺人。逃げ出した犯人。
なのに容疑者が誰かわからない。

先が気になって一気に読みました。

確かに凄いトリックだったとは思う。
違和感は感じてたけど、最後までわからなかった。
物語の最後のサプライズも終盤予想の付くものとは言え、なかなかに驚かされた。
ここまでは満足なところ。

ただ、巻末の各審査員の寸評でも指摘されているように、物語自体は読みにくかった。
同じような名前がたくさん出てくるのは、ある意味混乱を狙ったものかもしれないけど、それ以外でも視点が飛び過ぎるのも読み辛いし、それに平行して主人公的ポジションにいたはずの男が突然殺されるのも、びっくりした。

トリックとかサプライズに関しては本当に凄いと思ったけど、読み易さで言えば、本当に微妙なところだった。
帯の「必ず二度読む」ってところは、いろいろ確認するために読む直すための煽り文句だと思う。


プリズン・トリック





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2009年08月08日

サマーウォーズ 岩井 恭平, 細田 守

映画の内容に、大まかな部分では超忠実。
こういう本にありがちな、ノベライズ特有の設定とか、進行とかないので、映画を見た後に読むと、ほとんど目新しさがないという(笑)
そのために、文章とか悪くないんだけども、何となく退屈。

細かい部分は結構違って、特に、この作者の性分なのか、映画の中でいろいろ説明不足だった部分が、ちょっと設定をいじったりして、ほとんど説明されている。

たとえば、なぜにヒロインが、主人公らに声をかけるののか、とか、
割と内気な主人公が、何で数学オリンピックに参加したのか、とか、
なんで、映画の後半は暗号を解くのは主人公だけなのか、とか。

映画の最中に、その辺に疑問を持った僕みたいな人は、そういう部分はなるほどと思えて良いんだけど、こうやって全くアクが無くなってしまうと、逆に無味乾燥になっちゃって、よろしくない感じがするのは、難しいところだな。


とは言っても、小説としては悪くないし、元々いい話なので、買って損はないかと。映画を見た人は、思い出したりするのには良いかな。絵コンテ重いし。

あと、映画のクライマックスのあのゲームの、あの場での採点法がちゃんと書いてあるので、映画でわかりにくかった人には良いかも。


サマーウォーズ (角川文庫)



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2009年08月01日

無限ループ 大村 あつし

深夜の歌舞伎町。
平凡な会社員の誠二は謎の女子高生から物(ブツ)を買う。
それは、手を置くだけで怒りの度合いに応じて獲物の財産を奪える
恐るべき箱だった。
夜の銀座で金持ちを物色する彼は、
しだいに狂乱の世界と運命の女(ひと)に翻弄されていく。
誠二が見た「無限ループ」とは?
人間の欲と愛を描いた傑作ミステリー。
(背表紙より)


非常に細かく1章1章が構成されているせいか、
あっという間に読めちゃいます。
内容は、あらすじのごとくなんじゃそりゃって感じだけど、
まぁ割と楽しく読めます。

お金に溺れる人間の醜さというか・・・
ん〜やだねホント・・・

いっその事ラストも醜く終わらせてくれても良いのになぁと



無限ループ (講談社文庫)


ラベル:大村 あつし
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2009年07月24日

夏と花火と私の死体 乙一

乙一さんのデビュー作

主人公は,仲良しの弥生ちゃんに殺されてしまいます。
そこから死体を弥生ちゃんと,兄の健くんが隠す4日間のお話。

死体となった「わたし」目線で物語が展開していきます。

大人たちにバレないように死体を隠す兄妹には,ハラハラドキドキします。
しかし,健くんは小学生なのに よくあそこまで頭がまわるなあ〜,と思ったり……。



夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

ラベル:乙一
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2009年07月20日

世界がもし100人の村だったら 池田 香代子, C.ダグラス・ラミス

「幸せの度合い」の評価というのは、本来個人個人の絶対的評価だと思うんですね。「俺って幸せだな」とか。
人間は感情を持った生き物ですから、あらゆる出来事に日々一喜一憂します。ポジ志向の時は何をやっても大抵うまく行きます。楽しいですし。
それでも、時折ネガ志向に陥ることも多々ありますよね。いいのか悪いのかは別にして、そんな時に「幸せの度合い」を相対的に見つめることができる、分かりやすい本だと思います。
人間の欲望は留まるところがありません。それはそれで「もっともっと」という向上心ですから歓迎すべきだと思います。しかしながら、今がどれほど恵まれた状況なのかを知ることで、誰かに対して優しくできたり、つらいことでも乗り越えられたりと、「強い自分」を持っていられるんだと思います。
多くの人に読んで欲しい本ですが、特に、これから社会に出て頑張ろうとしている人、大変な状況で頑張っている人、そして自分にとって大切な人に贈りたい本です。
本文は日英併記です。


世界がもし100人の村だったら…
一度読んでみてください☆
『縮小された全体図から私達の世界を見るなら、
相手をあるがままに受け入れること、
自分と違う人を理解すること、
そして、そういう事実を知るための教育が
いかに必要かは火をみるよりあきらかです。』


がとても心に響きました。



世界がもし100人の村だったら


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2009年07月15日

イッツ・オンリー・トーク 絲山 秋子

「イッツ・オンリー・トーク」と「第七障害」の
2つの短編小説からなる本。

芥川賞作家絲山秋子のデビュー作。
だいぶ前に読んだきりだったが映画化されるとのことでごそごそ本棚から引っぱり出してきて再読。
登場人物がEDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、引きこもりのいとこなどなどバラエティにとんでいる。
映画ではトヨエツ、妻夫木くん、田口トモロヲなど誰がどの役をやるのか興味しんしん。
主人公の寺島しのぶは(まだ観てないけど)はまり役だと思う。

文庫化もされたみたいだが単行本の表紙のほうが私は好き☆

大きな事件がおこることもなく、だけど世間で言われるいわゆるひとつの『まともな人』が1人も出てこない日常を淡々と綴る…これぞ絲山節!!

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)

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2009年05月13日

テンペスト 池上 永一

読み進むにつれて、だんだん辛くなってきました。作者が誰に向かって物語を書いているのか全然分かりません。黄昏の琉球王国なんていうネタで、どうしてこういう物語になってしまうのか。もっと練った文章で書いていけば、きっと世の歴史好きにもアピールできるだろうに。
しかし強姦とか輪姦とか、やたら性が食い物にされている気がするのは、やっぱり「野生時代」という掲載誌の都合だろうな、きっと。この人本来の持ち味は、もっとあっけらかんと変態でエロだもんな。

まるで『源氏物語』よろしく、物語のそこかしこに、登場人物に成り代わって詠んだ琉歌が散りばめてあるのだが、これは作者のオリジナルなんだろか(いま手許に「おもろさうし」がなくてよく分からんのよ)。もし引用でないとしたら、「構想十五年!実はデビュー前から温めていたプロットです」とか言われてもうっかり信じてしまうかもしれない。

あちこちの感想をのぞいていると、あごむしられの真美那が大人気のようですが(笑)、私は才覚ひとつで後宮実務のトップ、女官大勢頭部までのぼりつめた思戸が好きですね。上巻に出てきてたころは、池上作品にお約束のあっけらかんと下品な子だったのに、大人になったらまぁ潔いこと。


『風車祭』や『レキオス』では、枚数が足りなくて無理矢理物語をたたんで読後感が中途半端になったように思ったものですが、『シャングリ・ラ』やこの『テンペスト』は、長すぎて個々のエピソードが繋がっていない感じを受けます。
例えば、話の都合と歴史の都合上で仕方がないとは思っても、宦官「孫寧温」がこんなにあっさり蘇ってしまっては、せっかく夢枕に立って男物の帯と簪をあの世へ持ち去ってくれた父君の立場がない気がします。そんな風に細かいところで辻褄が合わないというか、物語のダイナミズム「だけ」で瑕疵をごまかしているような気持ち悪さがつきまといました。
歴史的なことをテーマにしているのに、今風なカタカナ語が乱舞していたり「お嬢様爆弾」なる造語を頻発するなど、表現が稚拙に見えてしまうのも玉に瑕。この長さにもかかわらず大作を読んでいる気がしないのは、こういった要因が重なっているために重厚さに欠けるからでしょうね、きっと。
本人の志向とは別に、たぶんこの作者は短編の方が上手です。半分とまではいかずとも、いっそ3分の2くらいの長さにまで削ったら、もうちょっと私の感想も違ったものになったかもしれません。



テンペスト 上 若夏の巻
テンペスト 下 花風の巻





ラベル:池上 永一
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2009年05月01日

図書館戦争 有川 浩

「阪急電車」や、自衛隊三部作「空の中」「海の底」「塩の町」などを手がけた有川浩さんによる、「図書館戦争」シリーズ第一弾、その名も「図書館戦争」です。


舞台はそう遠くない未来、「メディア良化法」によって世の中に出回っている書籍・書物が、法のもとにより検閲で規制され、自由に本を見ることができなくなっていた。それに対抗するべく、もうひとつの法「図書館の自由法」が作られた。「メディア良化委員会」が振り回す法と同等の力を持ち、図書館に限っては図書の収集や検閲を免れる権利を獲得した。両者はお互い超法規的性質として、司法が介入することもなく、「武装」までし、お互いの立場をけん制しあう状態になっていた。「図書隊防衛員」は、この時代では自衛隊を凌駕するほど過酷な職種とされている。そんな中、図書隊防衛員として、新人女性隊員「笠原郁(かさはら・いく)」が入隊するのであった…。


…長い!まとめられない!
ん〜何とも説明・解説しづらい内容です。レビュー失格か!?
要約すれば、
「自由に本が読めなくなった近未来、本の存在を守るために一人の新人女性隊員が立ち上がった!」
という感じでしょうか。う〜ん、難しい。
そこに有川さんテイストの恋愛要素を入れれば、ぐいぐい読める一冊の出来上がり。
郁の周囲を固める友人やライバル、上官など、非常にキャラの位置付けが明確で味があり、どの人物にも好感が持てて思い入れができます。このさじ加減はすごい。バランスが本当にうまい。

今の世の中がもし、劇中のように、読むもの・見るものが規制されてしまったと考えると…。そしてそんなディストピアのような世の中にならなくはない不安定な現代、ということも踏まえると、大変意義深い、一筋縄ではいかない作品なのではないでしょうか。
言論や表現の自由、メディアの影響力、色々なバランスが今の世の中にはあって、うまく保たれているのだなあと思わされた一冊です。


図書館戦争

ラベル:有川 浩
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2009年04月28日

ヴァイオリニストの息子 阿木 慎太郎

アメリカ合衆国に初の黒人大統領が誕生! 勿論、有色人種が
最高権力者と成る事を快く思わぬ勢力もあり、過激な思想を持
つ集団は我慢ならぬ新しい大統領の直接的な排除を目論みます
。いやぁ、現在実社会でアメリカ大統領の候補者を選ぶ予備選
挙が行われていますが、黒人の血を持つオバマ氏や女性候補の
クリントン氏がマスコミで大きく取り上げられている事から、
奇妙な錯覚を強く感じましたね。

ストーリーは合衆国サイドではシークレット・サービスのエー
ジェント、日本側では警視庁警備部の課長代理、そして暗殺者
の3つの視点から描き出されて行きます。小説を現実が追い掛
けている事から、なにやら奇妙にリアリティに溢れていて、ペ
ージを捲るのがもどかしいくらいでした。特に暗殺者の生い立
ちから現在に至るまでの描写が緻密かつ丁寧な事から、ついの
めり込んでしまいますよ。

一方、日本側の担当者も中々に複雑な経歴の持ち主であり、ア
メリカサイドのシークレット・サービスと共に物語りを面白く
してくれています。ただ残念なのは作家さんの親切心でしたね
。せっかく謎が深まり、どうなって行くのか? ハラハラ・ド
キドキの展開が繰り広げられて行くのですが、お話のそこかし
こに明らかな伏線がわかりやすく散りばめられている事から、
最後に一気に謎が解けるカタルシス感が、やや希薄になってし
まいました。

ハードケース盤の帯びに『武器はスーツケース型のミニ原爆』
と、堂々と書かれてしまっていますが、これも些かいただけま
せんね。この一文がなければ、お話の謎はもう少し深まってく
れた様な気がします。でも、最後にはしっかりとお約束のどん
でん返しも用意されているサービス精神旺盛な作品でした。



ヴァイオリニストの息子 (双葉文庫)

ラベル:阿木 慎太郎
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2009年04月24日

沖で待つ 絲山 秋子

芥川賞受賞作

なにげない風景が愛おしくなる。

たとえば新入社員の「私」が福岡勤務の辞令を受けて初めて現地をふんだとき、
初々しさよりも見知らぬ土地への不安が少し上回っている。
同期の「太っちゃん」と同じ思いを抱えながら町へ繰り出す。
バブルまっただ中の浮遊感と、彼らの心のうちがリンクする。

同じ年に入社して、けれどそれだけの関係に留まらない「同期」という間柄。
「私」と太っちゃんの連帯感も友情ととても似ている。

ふたりは密約を交わす。
どちらかが死んだとき、
残された方は死んだ方のパソコンのハードディスクを壊すこと。

その日はずっと先だと思っていたのに、
太っちゃんは事故で突然、他界する。

約束を果たした後に、彼がパソコンから抹消したかったのは、
妻に送った詩の数々であることが判明した。
詩を書く男のノスタルジックな残り香。
ふと思いたって「私」は電車を乗り換え、空家となった太っちゃんの部屋を訪れる。

なにげなさの連なりが読後の胸を満たす。

沖で待つ (文春文庫)

ラベル:絲山 秋子
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袋小路の男 絲山 秋子

「沖で待つ」の絲山秋子さんの川端康成文学賞受賞作品。単純に芥川賞作家の作品に興味があったのと、カバーの写真に惹かれたのとで手に取ったのですが、感想は、「すき」です。


家族でもない恋人でもない小田切孝を、大谷日向子は何年も何年も恋い続ける。
18年たった今も。そしてきっと、これからもずっと。


つかず離れずの関係が変にもどかしくなくて、ある意味これは究極の理想の形なんじゃないかと思える。

『袋小路の男』を読んで日向子の小田切への12年かけた深い愛を知るのです。
『小田切孝の言い分』を読んで小田切の本音が少し見えると、日向子と同じ女である私は、それがちょっとうれしくて幸せな気分になるのです。

完結しないのがもやもやして、なのになんだか気持ちいい。こういうのもありなのか、って。


聞けば、「沖で待つ」も恋人でない大人の男女のお話らしい。「袋小路の男」の中に収録されている『アーリオ オーリオ』もある種、危ういバランスの中で交流する男女のお話と言える気もする。

ともすれば物足りなくなってしまいそうな曖昧な関係を軸に、これだけ清々しい気持ちになれるなんて。この快感を知ってしまったら、もう次を読むしかない気がする。


袋小路の男 (講談社文庫)

ラベル:絲山 秋子
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2009年04月21日

LOVE GAME 安達 元一

放送作家が書いた小説なんて、ミーハーだけど中身が薄いつまらないものやろなあ
・・・という期待?を見事に裏切ってくれた小説☆★

確かにミーハー
でも、「真実の愛」の意味を探るゲームは最後まで付き合っててあきません。

予想外の愛の罠にひっかかりっぱなしで、最後までドキドキしっぱなしの展開。
感情移入できる登場人物達。
真実の愛の意味を掘り下げていくラスト。

手に汗を握って小説を読みたい人、
恋愛の意義を見失ってる人にオススメ♪


LOVE GAME

ラベル:安達 元一
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2009年04月13日

雷電本紀 飯嶋 和一

書評欄で星野博美が作者を紹介していたので、読んでみた。
江戸時代の伝説的な強豪力士・雷電為右門を描いた歴史小説である。
力士の伝記ではあるのだが、いわゆる武勇伝や豪傑談のたぐいとはまったく違う。まあ今どきそんなもの読む人いないしね。

雷電が活躍した天明・寛政年間というのは天候不順による凶作が続いた時期で、一揆や打ちこわしが激しかったらしい。状況を巧みに織り込んだしっかりした社会派小説になっている。読み応えがあるのはいいが、作者の視点がとことん庶民寄りなので好みが分かれるだろう。

つまり、<鳥の目>ではなく<虫の目>で見た歴史小説なのだ。他の作家による、明治の元勲や戦国大名の名を冠した作品の大半が<鳥の目>派だ。ゆえに歴史小説マニアにはかえって受けないかもしれない。私はどちらかというと<虫の目>で歴史を眺めたいほうなので、大変面白くかつ参考になった。華やかな江戸町人文化などと言っても、その恩恵にあずかれた人は人口の一割もいなかったんですね。

作者はよほど当時の権力者(=侍)が嫌いらしく、「糞侍」という表現が随所に出てくる。あまり堂々と書いてあるので、そういう身分があるのかと思った。単なる罵倒語でした 痛快ですな。小説の白土三平みたい。
善玉悪玉がはっきりしすぎるのが、ちょっと鼻につく。そうしないと歴史小説にならないのはわかるけど。
ラストは感動した。伝説の男は死んで神となった・・・のか。

雷電本紀 (小学館文庫)

ラベル:飯嶋 和一
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黄金旅風 飯嶋 和一

飯島和一の作品の特徴は、史上最強といわれる相撲取り雷電為右衛門を主人公にした『雷電本紀』にしても、空前の災厄で逼塞した江戸天明記を舞台に飛行器の発明にすべてをかけた"鳥人"幸吉を主人公にした『始祖鳥記』にしても、そして今回の『黄金旅風』にしても、士農工商みたいな身分制度に奇麗に分類されない、いわゆるマージナル・マンを主人公にし、彼らの眼を通して、その時代の抱える矛盾点というか限界点をあぶり出していくようなところかと思います。

時代小説というと、やっぱり侍とチャンバラってのが魅力なんですが、飯島和一の作品には侍もチャンバラもほとんどオマケ程度にしか出てきません。それにもかかわらず、飯島時代劇の主人公たちの格好良さは凡百の剣豪たちをはるかに凌駕するものがあります。まさに肌が粟立つ感じの臨場感。そのうえ、その時代が抱えている構造的な問題点も浮き彫りになってくるところもスゴイ。

今回の『黄金旅風』では、今日でいうグローバリゼーションの問題と、当時の政府(江戸幕府)がどうして「鎖国」という選択をしたのかが朱印船貿易家と長崎町民の眼を通して語られていくわけですが、この貿易家の視点というのは、『始祖鳥記』のときに出てきた「海の民」の視点に通じるものがあると思いますね。前に、諸星大二郎の『海神記』のときにも引用したのですが、再度引用してみます。

(以下引用)「身一つならば何とでもなるのが海の民だった。いざとなれば目の前の海に行き、魚貝を採って食えばいいだけのことだ。『イネ』などという草の実を一心にこしらえ、空模様ばかり始終気にして、恐れかしこまってばかりいる陸(おか)の民とは根から違う。古来より海の民は絶望から最も縁遠い者たちだった。海の民は、いつだって心の内に大海原が波打っている。」

それに対して、今回の『黄金旅風』にはこんな視点が出てきます。

(以下引用)「父平蔵に死なれてみて、平左衛門は初めて己が何者であるのかを考えた。同時に、末次平蔵がいかなる人物で、なぜあのように、ものの怪に取り憑かれたようにして駆け続けなくてはならなかったのかを。末次平蔵は若くして南蛮貿易に深く携わり、東アジアに進出してきたポルトガルやイスパニアと直接対峙せざるを得ない立場に置かれた。それがゆえに、いち早く江戸幕府を中心とする『国』というものを意識した極めて前衛的な人物だった。それまでは長崎や肥前、西国九州はあっても、本州と九州、四国をすべて合わせた『国』などという奇妙な概念を意識することも、また必要もなかった。その新たな国家という大義のためならば平蔵は己の身を忘れた。血縁さえも犠牲にすることも厭わなかった。」

ここには、「外国」という境界が出現してはじめて「国家(=日本)」という幻想が現実味を帯びてくる様子が描かれています。むしろグローバリズムの方が先行していて、そのカウンターとしてナショナリズムが立ち上がってくるという構図。「国」というものを意識することが、江戸時代の初期においても、いまだアヴァンギャルドだったというのは新鮮な驚きでした。

そういえば、ポール・ギルロイも『ブラック・アトランティック』のなかで「いわば船に乗り込むことは、近代性とその前史とされているものの普通に認められている関係性を概念的に考えなおすための手段を約束してくれる。」って書いてましたっけ。


黄金旅風 (小学館文庫)

ラベル:飯嶋 和一
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2009年04月12日

グーグーだって猫である1 大島 弓子

大島弓子のエッセイ風漫画。

猫好き作家はあまたあれど、「綿の国星」の大島弓子は別格。

シンプルな絵柄が多くを語るね。
淡々とした魅力がある。

愛猫の死や自らの悪性癌があっても、ハッピーライフなのだ。
大切なものを特別声高に語らず、当たり前のこととして
とらえられる本。

そんな難しいこと考えなくてもかわいいし、
かなり笑いがとまらない。

エッセイなんだけど、やっぱり「あの」大島弓子だなぁと。。猫と暮らしている人なら誰でも思い当たるようなことだけど、こういう風には表現できないものだよなぁと。とても癒されます。

猫と一緒の人も、好きだけどまだ猫のいない人も癒されると思います。プレゼントにもよさそうな1冊。

それはそれとして、大島さんって綺麗好きなんだな(猫トイレの掃除の仕方)とか、うちの2猫ってやっぱ仲悪いんだなとか。。思いました。


グーグーだって猫である1 (角川文庫 お 25-1)


ラベル:大島 弓子
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2009年04月10日

そのときは彼によろしく 市川 拓司

1年前くらいに借りた本。

つい最近本屋に行ったら「文庫」になってて、もうすぐ映画化するらしい。

作者は「いま、会いにゆきます」の市川拓司さん

ある青年の営むお店に幼なじみの女のコがアルバイトでやっくる。

女の子が突然やってきたのはワケがあったんだけど・・・・

昔話をする姿を見ると、幼なじみっていいなぁ。と思いました。
昔を思い出せて、何でも話せるって素敵です。

そして、誕生日がとっても大切なんだなと思いました。市川さんらしい作品です。


実は本を借りた人が山田孝之にそっくりだったので、今度の映画でその青年役を山田孝之が演じると知ってびっくりしました。

映像で見てみたい。そんな映画です。

そのときは彼によろしく

ラベル:市川 拓司
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2009年04月03日

出星前夜 飯嶋 和一

 『黄金旅風』(小学館)以来、四年ぶりの新作。寡作な作家ではあるけれど、出版されるごとに、その大部の物語を、胸を熱くして読む。その期待を裏切られたことはない。

 今回は、島原の乱が取り上げられる。話としては前作の『黄金旅風』に続く時代であり、『黄金旅風』の主人公だった長崎代官・末次平左衛門も登場する。しかし主人公は、末次平左衛門ではなく、天草四郎(小説内ではジェロニモ四郎)でもなく、有家村鬼塚の庄屋であり、かつての有馬家重臣・鬼塚監物こと甚右衛門。そして有家村の若者、矢矩鍬之介こと寿安。長崎の医師・外崎恵舟。しかし、彼らを主人公と形容することは適切ではないかもしれない。この小説が描いているのは、群集である。

 有馬家の旧領を治める松倉家の二代目当主松倉勝家のもと、実際の石高の倍を越える年貢を取り立てる非道で過酷な藩政に、領民は苦しんでいた。そこに夏の長雨や大颶風の襲来で農作物は壊滅的な打撃を受けた。しかし年貢の取立ては軽減されることがないばかりか、これまでの未払い分まで要求される。そのような失政が招いた貧困のため、領民の子供たちのあいだに、激しい熱や下痢によってその命を奪う「傷寒」が蔓延する。甚右衛門は名医と噂される有家村出身の長崎の医師・外崎恵舟を呼び寄せるが、彼は松倉家の代官手代に追い払われてしまう。各村の陥っている危機的状況になんら手を打たないばかりか、呼び寄せた医師まで追い返してしまう、その非道な対応に、若集たちの中心人物である寿安は、座して死を待つよりはと、教会堂跡のある森に立てこもり猟銃や石礫で武装する。それがきっかけとなり、甚右衛門らかつて有馬家の軍役衆であり重臣でもあった帰農した庄屋たちも、暴政に対する武装蜂起を決意し、天草地方の武装蜂起衆と呼応して、島原の乱へと突き進んでゆく。

 第一部は甚右衛門が騒乱へと発展することをなんとか食い止めようとして果たせず、苦悩の果てに武装蜂起を決断せざるを得ないところまで追い込まれる様が描かれ、第二部は実際の騒乱の顛末が、原城の攻防戦と蜂起勢の全滅まで、客観的な記述で描かれている。

 島原の乱を単にキリスト教徒の弾圧に対する反乱と捉えることはできない。貧困によって追い込まれた領民たちが、一度棄教したはずのキリスト教への「立ち帰り」によって求心力を増して、武装蜂起へと至る。問題は幕藩体制のひずみにあり、その中での、キリスト教への「立ち帰り」であると、この小説では捉えられている。むしろ、キリスト教徒への弾圧を幕命によって行うことを隠れ蓑として、過酷な藩政を敷いてきたとも捉えられている。非道な年貢徴収に対して抗議する者は、キリシタンとして処刑され、藩はその処罰をキリシタン弾圧の名の下に正当化した。

 もうひとつ、この小説の魅力は寿安だろう。この少年は母方の祖父にイスパニア人を持ち、父は有馬家の水軍衆・矢矩内蔵之丞である。その父は甚右衛門と同様に有馬家転封後に帰農したのだが、あまりに過酷な年貢取立てに藩に対して抗議した結果、キリシタンへの立ち帰りとして処刑された。寿安は有家村において若集のリーダーとして、動乱のきっかけを作るが、蜂起軍が大挙して島原城へ迫る過程で、暴徒と化してしまう有様に絶望し、ひとり蜂起軍を離れる。その後、数奇な運命をたどって、医師として身を立てるのだけれど、寿安の心の葛藤が、この悲しい動乱を描いた小説に、一筋の光を投げかけている。

 飯嶋和一の歴史小説はすべて好きであるけれど、中でも『神無き月十番目の夜』(小学館)がもっとも好きだった。『出星前夜』で描かれている世界は『神無き月十番目の夜』にとても似ている。中世から近世へと移行する過程での葛藤や摩擦を、為政者からではなく、民衆の視点から、群集を描ききることによって活写する。その手法は、この小説において極まったといえるだろう。この作品は、現段階での著者の最高傑作ではないだろうか。
出星前夜


ラベル:飯嶋 和一
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2009年04月01日

ぼくと1ルピーの神様 ヴィカス・スワラップ, 子安 亜弥

主人公の名前はラム・ムハマンド・トーマス。
ヒンズー教徒ともイスラム教徒ともキリスト教徒ともとれる
名前の持ち主である彼は、インドの孤児である。
ウェイターをしている彼が、ある日逮捕されてしまった。
容疑は10億ルピーをかけたクイズ番組での不正疑惑。
クイズ番組でみすぼらしい彼が全問正解したがために、
容疑をかけられ、逮捕されてしまったのだ。
けれども、紛れもなく彼は自力で12問の問題を解いた。
学のない彼はどうやって難しい問題を解いたのか?
そのヒントは、彼が生きてきた孤独な過去にすべてあった。
小説は、ラムがクイズに答えられた理由を
12問の問題ごとに、過去にさかのぼって描いている。


読むのに時間がかかったけれど、とても面白い小説でした。
インドってとても興味深い国で、読んでるとワクワクする。
思い出すのはデリーの人ごみ、牛ごみ、
平気で数時間も遅れる列車、
アグラの美しいタージマハル・・・
そして、旅行に行くと、
必ず出会うことになるストリートチルドレン。
小説を読むと、決して少なくはない
インドの孤児の現実を知ることになります。

彼らの生活がどういうものなのか、
フィクションと言えども垣間見ることができ、
まーなんやら複雑な気分にもなりましたよ。
「その日を必死に生きなきゃいけない」なんて
ぬくぬく日本人の私には想像もつかない世界です。
特に、列車に乗り込んでくる
聖歌を歌う盲目の少年たちに関するエピソードは惨い。
あるとは思ってたけど、稼ぐためにムリヤリ・・・
ってのはやっぱりあるんですね。
カースト制度も未だに根強いみたいです。

けど、この小説のいいところは、辛気臭くないこと。
沢山の悲しい辛い事件があるんだけど、
主人公の機知に富んだ行動が痛快に感じられるんです。
ラムの頭の良さが魅力なんだろな。

映画化も決まっているそう。
確かに、これを映画化したら面白そうです。
完読してしまうのがなんか寂しくなるような小説でした。



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2009年03月24日

オリンピックの身代金 奥田 英朗

東京オリンピックが目前に迫った夏のある日。警察官僚の私邸が爆破され、警察にオリンピックを止めるよう脅迫状が届く。一人のテロリストと国の威信を掛けた警察・公安との静かな対決。連続爆弾事件が世界に与える影響を鑑みた結果、全てが極秘裏に進められる捜査という設定が巧い。誰にも知られず、決して表に表れることのなかった戦い。オリンピックという狂熱の下にある過酷な世界。戦後ではない、という発展を支える土台となった人々。オリンピックを作るために死んでいった労働者の数たるや驚愕である。富と栄華を謳歌する生活と、底辺で働くしかない生活との落差が激しいだけに、でも、どうすることもできない歯がゆさに、嘆息せざるを得ない。しかしながら、少しもテロリストの行動が納得できない辺りは著者の手腕の成す業である。彼の考え方は確かに理解はできるのだが、その行動を見ていると、ただやけくそに(その心はどこまでも空虚なのだが)何か大きなものを破壊したいという衝動なだけな気がして、不快で、嫌悪すらも覚える。結局、どこまでも突き進んでしまう姿は憐れでもあった。それでもやりきれない思いだけは残り続ける。印象に残ったのは「横に積む」という村田の言葉。45年以上を経た今、それはちゃんと横に積めているのだろうか?


ラベル:奥田 英朗
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ララピポ 奥田 英朗

装丁を見てちょっと驚く。都市部ではたぶん大丈夫だろうけど、地方ではひょっとしたら装丁を変更しているんじゃないだろうか。表紙からしてキワドイ。内容もキワドイ。性のシーンの描写が臨場感あってすごいです。でも、あまりにも情けなさ過ぎて泣けてきます。六人の登場人物を見ていて、決して共感したくない!と思うヤツラばかりでした。世には、勝ち組やら負け組みやらという風に、経済的に二者分類するようですけど、きっとこの作品の登場人物たちは負け組みになるんでしょう。この人たち、最初から負けているんですよね。自分の妄想だけに逃げ込んで、自分の考えを絶対だと思い込んで他人に同じ考えを求める第一話のフリーライターは、典型的なオタク系の思考。ただの勘違い野郎です。自分もそういう勘違いをよくしているからわからないではないけど、見ていて憐れです。自分の力で、もがいたり抗おうとしない体たらく。かと思えばしっかり現実を見て、等身大の自分を把握している最終話のテープリライターは、卑屈な性欲の権化。たぶんいくつかは奥田氏自身のことでもあり、またいくつかはこれまで出会った人や、取材で実際にいた人たちなんでしょう。リアリティがありました。六人の人間達がものすごく固まった地域に住んでいるということもポイントのような気がします。自分たちのご近所でもこういうドラマがありうるのかも。ところで、六人しか描かれなかったが、他にもトモコや菊地令子という話になりそうなキャラがいました。この続きを自分なりに作って、繋げて遊んでみようかと思います。「一冊本を読めば、一冊本を書ける」というようなことをたしか恩田陸が言っていました。行間を読むことで、また新しいストーリィが生まれるものです。


ラベル:奥田 英朗
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ガール 奥田 英朗

30代。OL。文句ある?という挑発的な謳い文句。

働く30代女性の5つの短編集。
それぞれ悩みながらも、
どこかキラリと一本通った女性たちが素敵。

もし、職場に奥田英朗みたいな人がいたら、困る。
何もかもお見通しなのだ。この人には。
何でこんなに細やかに女性の心のひだが書けてしまうの?

ここまで書くからには、相当ヒアリングしたに違いない。

いやでも、それにしたって、もしやゲイ?って思うくらい、リアルに共感。
でも、すごくすごく、励まされる。

一番好きなのは「ワーキング・マザー」
共感のドツボ。シングルマザーと戦う女の方だけど。

「話してよかった。立場はちがっても、女同士は合わせ鏡だ。
 自分が彼女だったかもしれないし、彼女が自分だったかもしれない。
 そう思えば、やさしくなれる」(P204)

『負け犬の遠吠え』もいい本だけど、これも読んでほしい。

時々、切なくてほろりとしても、最後には、
目尻の涙をこすって、よっしゃがんばろ!と、
素直な勇気がもらえる。私のバイブルです。


ラベル:奥田 英朗
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マドンナ 奥田 英朗

40代の男性を主人公にした5つの短編小説。

「マドンナ」
世の中の男性のほとんどはこうしてできている気がします。

「ダンス」
理解がないのは大人なのか、子供なのか。

「総務は女房」
郷に入っては郷に従え。

「ボス」
女性の上司を持つってどんな感じなんだろう?

「パティオ」
お気に入りの場所って、誰にでもあるんだろうな。

「解説」
8割型「マドンナ」(最初の短編)のお話。

男の人の気持ちがわかるかもしれない1冊。

読みやすいし、面白い。うまくいかなくてじれったいけど、そこが好き。



ラベル:奥田 英朗
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2009年03月21日

東京物語 奥田 英朗

青春ものになる。
とにかく都会へ出て、自活しようという青年の、
生き生きとした働きぶり、
何でも自分でやってきたというゆるぎない自信、
部下を遣うということ、
そしてまだ若造だと思い知らされる一瞬の
描写の闊達さ。
大学時代の、恋の一幕のういういしさ。
20代後半の、お見合いともデートともつかぬ
場面での、女の子の心境。
なぜ地元を離れるか。
地元とはどんな存在か。
すべてが、興味深く、ユーモラスなタッチで
書かれていた。
よみやすく、おもしろい。




ラベル:奥田 英朗
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2009年03月19日

延長戦に入りました 奥田 英朗

奥田英郎恐るべし!!!かなり笑わしてもらいました。

インザプール、空中ブランコの伊良部の生みの親に間違いないと実感しつつ、海の広さと深さの様な好奇心と探偵が舌を巻く様な観察力と洞察力、それでいて斜めチックな信念と、うまく力を加減する適当っぷり!感無量です。

言葉をよく知ってるうえに、ずば抜けた情報量!しかも他人事にも近い客観的意見のエキスパート!!!

もう一押ししとくと、正論でも異論でもないし、正義でも悪でもない。黒でもないし白でもなくて灰色的観点で書いてある本なので気楽に読める本です。

とりあえずテーマは飛び飛びで飽きはこないし、長すぎず短すぎずで、もの足りなく疲れもこないのでヒマ潰しにも最適です。


キング・オブ・エッセイ!!!
脱帽!!!!!



ラベル:奥田 英朗
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野球の国 奥田 英朗

直木賞作家奥田英朗の旅エッセイ。
旅+野球観戦+映画+マッサージ。

この人野球を愛してます。

エッセイの中でご本人の神経が細いという旨の話が多いのだが、どのようにして心療内科医伊良部が生まれたのかが推察される。

作家としての小説に対する記述もあり、そこも楽しめる。



ラベル:奥田 英朗
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最悪 奥田 英朗

いやー面白かった。
本当に「最悪」なくらい面白かった。
そして長かった。。。

長編は読むのが日にちかかるの。
でも、寝るのも惜しんで読んだ。
レンタルビデオ明日返さないといけないから
見てるときもコレ読んでた。
面白い。。。

映画「マグノリア」の暗いバージョンです。
もうグンソウゲキ?ってゆーの?
いろんな登場人物を切り貼りしてて、
しかも、犯罪ものですから!

下手な映画よりガゼン面白い。
ってか映画にしたらいいじゃん!ってくらい
映像の浮かんでくる話しでした。

この作者はプロットを立てないらしいと聞いたことがあるけど、
これ読んで「怪物だ」と思った。
プロットなしで頭でコレを構成してストーリーを転がしてるのかと思うと。。。

そんなこと考えながら読むとますます面白いです。




ラベル:奥田 英朗
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邪魔〈上〉奥田 英朗

奥田 英朗さんの作品「最悪」に続き「邪魔」も読み終わりました。
あらすじは
及川恭子、34歳。サラリーマンの夫、子供二人と東京郊外の建売り住宅に住む。スーパーのパート歴一年。平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。恭子の心に夫への疑惑が兆し、不信は波紋のように広がる。

3人の視点でドラマは進んでいく。
妻を交通事故でなくしたトラウマから立ち直れないでいる警部補 九野
家族4人で平凡に暮らす主婦 恭子
将来に目標もなく、ワルにもなりきれない高校生 裕輔

特に恭子は、夫の放火事件を機に変貌していく様がリアルで怖いぐらいでした。
こんなちょっとしたことで人の人生はこんなに変わってしまうのか。恭子は何にも悪いことはしていないのに一番酷い人生になってしまうのは、なんとも痛々しい。

高校を中退するハメになってお先真っ暗の裕輔に刑事の井上がこんなことを言っていました。
「人間、将来があるうちは無条件にしあわせなんだよ。」
この言葉だけみてもたいしたこと言っているようにみえないが、この本を読んだ後だとすごく深い言葉に変わるはずです。この言葉はぐっときました。
そう、人はしあわせになりたくて生きている。




ラベル:奥田 英朗
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2009年03月10日

薬指の標本 小川 洋子

サイダーの製造工場で働いていた「わたし」は
ある日ベルトコンベヤーに挟まれて薬指を失う。

サイダーのタンクに落ちた
薬指の先端から吹き出した血が
甘い香りに包まれたタンクの中のサイダーを
桃色に染める。

桃色に染まるサイダーの清涼感と、
その中に落ちる薬指。

そぐわないはずの組み合わせなのに
その違和感も魅力なのか
なぜか自然に受け入れてしまう。

古い建物に住むふたりのおばあさん、
靴磨きのおじいさんもとてもいい。
もしわたしだったら、
あのおじいさんの忠告に従っただろうと思う。
あの提案に従う道を選んでも
行き着く場所は同じなのかもしれないが。

ひさびさにはまる作家さんに会いました。
これから当分小川ワールドに浸る予定(^。^)


ラベル:小川 洋子
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2009年03月09日

猫を抱いて象と泳ぐ 小川 洋子

小川氏の小説では身体の一部がなくなったり欠けたりすることがしばしば描かれるのであるが、この作品においての身体は逆に膨張し拡張していくものとして描かれる。
そこにこの作品のメタフォリカルな意味が隠されているように思う。

主人公は生まれた時に上下の唇が癒着しており、メスによって彼の世界は無理やりにこじ開けられた。
彼が興味を引かれたのは、体が大きくなりすぎてデパートの屋上から地上へ降りることが出来なくなった象のインディラと、
家と家の隙間に挟まって出られなくなってしまった女の子のミイラ。
そして、改装バスの中で暮らすチェスと甘いものが大好きなマスター。
この人も後に日を追う毎に太ってしまいバスの中から出られなくなってしまう。

少年はひょんなことからマスターと出会い、チェスを教えてもらうことになる。
マスターはチェスをこんな風に表現する。
チェスは相手と一緒になって奏でる音楽のようなものだ、と。
少年はマスターとの対局で窮地に立たされたときに、チェス盤の下のわずかな隙間に潜った。
すると、少年はチェスの無限の海を宇宙をそこに感じるのである。
チェス盤という小さな正方形の下の僅かな隙間で、少年はチェスの広大な海を漂流するのである。
少年は盤下のチェスの無限に広がる海の中で、インディラやミイラと自由になるのである。
盤下でチェスの駒が奏でる音に少年は耳をそばだてる。
その音がどんな音色かを聞く。
チェスの静かな水面に投じられた一手による波紋を感じる。
そうして少年は今の一手がどのような思いでさされたもので、さらにその向こうにいる対局相手がどんな人間なのかといったことをありありと感じることが出来た。
その一手に抗うでもなく、屈服するでもなく、我を捨てて受け止め寄り添いながら、一緒に音楽を演奏することが出来た。


この作品を読んで考えたことは、(てか今これ書きながら思いついたことなんだが笑)
人の世界との関わり方についてだ。
少年は対局相手との間にあるチェス盤という空間の中で二人の世界を築き上げる。
そのためには小さな世界に無限の世界を感じようとする無垢な心と純粋な感受性が必要であって、
そこに彼のエゴは決して介入しない。
人は誰かあるいは何かと対峙した時に、互いが自我を膨張させることなく、二つの間にある世界を読み取ろうとすることができたら、二つの心は綺麗な音楽を奏でて、素晴らしい世界を作り上げることができるんじゃないだろうか。


だらだらとまとまりのないことを書き連ねましたが、最後にマスターの名言を。
「何となく駒を動かしちゃいかん。いいか、よく考えるんだ。あきらめず、粘り強く、もう駄目だと思ったところから更に考えて考えて考え抜く。それが大事だ。偶然は絶対に味方してくれない。考えるのをやめる時は負ける時だ。さあ、もう一度考え直してごらん。慌てるな坊や。」

いやはや、ほっこり心温まる作品です。
一段と小川洋子ちゃんが好きになりました



ラベル:小川 洋子
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2009年02月24日

納棺夫日記 青木 新門

「今日から、湯灌、納棺の仕事を始めることした」

妻からは「穢れてる」とセックスを拒否され、親戚には「一族の恥」と絶縁を迫られる。それでも著者は死体をアルコールで拭き、白衣を着せ、髪と顔と整え数珠を持たせ納棺し続ける...
「職業に貴賎はない。いくらそう思っても、死そのものをタブー視する現実がある限り納棺夫や火葬夫は、無残である」

あるとき、元恋人の父を納棺することになる。親戚の見守る中、著者の滴る顔の汗を拭いてくれた元恋人。

「私の全存在がありのまま認められたように思えた。そう思うとうれしくなった。この仕事をこのまま続けていけそうに思えた」


そこから著者の死生観は離陸し徐々に広がり始める。

「毎日毎日、死者ばかり見ていると、死者が静かで美しく見えてくる。それに反して、死を恐れ、恐る恐る覗き込む生者たちの醜悪さばかりが気になるようになってきた。」

ある時は、孤独死の現場の蛆虫の山を掃きつつ、逃げる蛆虫に生を感じる。またある時は、死体に触れた手を洗った水を捨てに行った竹林で見た、トンボの透き通った体内に見える卵に涙する。

死期が迫った者に見えるという「不思議な光」。科学、哲学、宗教、文学の世界を横断しながら、現代の生死のあり方について貪欲に問い続ける。現場を知る納棺夫の声は重みがあって説得力がある。


小説のような、仏教書のような、ノンフィクションのような一冊。 小説家、詩人だけあって、北国の風景描写は、目の前に見えてしまうほどの迫力で味わい深い。

この本を読んで救われた人も少なくないと思う。
傑作です。




納棺夫日記 (文春文庫)

ラベル:青木 新門
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2008年06月17日

空中ブランコ 奥田 英朗

読みかけだけど待ちきれずにレビュー。

「イン・ザ・プール」を読んでから一年弱だろうか…
伊良部の強烈なキャラクターは相変わらずでした。

最近、宮迫さん主演で舞台をやっていたようですが
映画の松尾スズキさんといい、小説の伊良部よりカッコいいのは何故なのか笑
( イメージ的には、松尾さんの方が近い気がする )

まるで子供みたいで、わがままマイペースの伊良部だけど、結局は患者を救っている。不思議なもんです

松尾スズキ主演で続編希望!


ラベル:奥田 英朗
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2008年03月13日

「暗室」のなかで―吉行淳之介と私が隠れた深い穴  大塚 英子

絶句。吉行淳之介って女性に関してはすごく恵まれた人だったのでは。いろんな人が彼のことを書いてるけど、この人のが一番飾ってないような気がしました。
M女史に対して晩年吉行氏は辟易していたようなことが書いてあり、それはまたしても私はショックを受けました。みんな彼を優しすぎるというが、それは本当に優しさかと問いたい。


ラベル:大塚 英子
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2008年02月28日

国を思えば腹が立つ―一自由人の日本論 阿川 弘之

国を思えば腹が立つ
この人はつまるところ、皇室がすきなんだと思う。
この世代にとって皇室はなくてはならない存在なのかもしれない。
後半は皇室の人柄のよさについて描かれている。
あと大江健三郎への阿川目線の主張など。
前作に比べて、昭和天皇、今上天皇についての話が多い。




ラベル:阿川 弘之
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本当に信用できる人物 阿川 弘之

本当に信用できる人物
あなたの周りに本当に信用できる人はいますか。職場で、学校で、地域で、あなたがであった、本当に信用できる人物との、『論』に走ることのない具体的なエピソードを募集します。

公募作品を阿川さんが選考してまとめたもの。

信用できる人はたくさんいるけど、”本当に”信用できる人、って難しい。

この本に出てくる人々の”本当に”信用できる人の話を聞いて、自分の今までを思い返してしまいます。





ラベル:阿川 弘之
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大人の見識 阿川 弘之

大人の見識
昨日,購入しました.
著者の年齢はだいぶ上ですが.意見は共鳴します.
時間がないから読書が出来なのではなく,TVの時間を取られ過ぎです.

大人はもっと自分の時間を持って,知見を深めるべきです.

さて,内容は時代が古すぎますが,彼の経験が詰まっていて面白く読みました.
海軍がリベラルな雰囲気を持っていたというのは戦前の軍隊に対する私のステレオタイプでしょうか.
海軍は精神のフレキシビリティを伝統にしていたということですが,今の海上自衛隊にも漁船を回避する柔軟性を持ってほしいところです.
ただ,後半のイデオロギーに関す見識は今の時代では時代錯誤ではないでしょうか.





ラベル:阿川 弘之
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Burial in the Clouds雲の墓標 阿川 弘之

雲の墓標
学徒動員で徴兵された、1人の大学生の日記という形で書かれています。
主人公の戦争に対する疑問と葛藤がリアルに描かれていて、著者の戦争に対する思いがよく分かりました。
感動しました!!




ラベル:阿川 弘之
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新編南蛮阿房列車 阿川 弘之

新編南蛮阿房列車
書店で見つけた時、こんな本があったのかと目を疑った。
しかも内田百閧ナはない。何だコレは ??? 
ページをめくると冒頭に百關謳カが云々とある。ははあ、
そういう事か、要するに百關謳カの衣鉢を継いだというわけだ。
いやはや、実に面白かった。百鬼園先生もビックリ。
あとがきに書いてあったけど三代目鉄道作家は宮脇俊三さんに
なるのだそうだ。その筋の方には今や宮脇さんの方が有名? 
すると僕は初代から二代目、そしてこれから三代目の作品を
読む事になるようです。





ラベル:阿川 弘之
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志賀直哉交友録 志賀 直哉, 阿川 弘之

志賀直哉交友録
阿川弘之は一生読むコトがなさそうな作家だが、志賀最後の弟子だけあり、本書はエッセイの類に留まらず、40人分の志賀直哉の友人にまつわる随筆、書簡、対談、刊行時の宣伝文、相手からの手紙で構成されていて、なかなか気が利いている。
エリート揃いの白樺派の長老格にして、日本最強の私小説作家であり、<小説の神様>と呼ばれた男だが、プロレタリア文学の小林多喜二への懇切丁寧な作品評を載せた手紙やどう考えてもソリが合わないだろう芥川龍之介の印象記を読むと懐の広い人格と伺える。
漱石・内村鑑三ら師匠筋、武者小路や里見ら白樺派の生涯の友たち、尾崎一雄、網野菊、藤枝静男ら個性溢れる弟子たち、梅原隆三郎や伊丹万作ら異業種の芸術家たちと、多彩であり、小林秀雄一派や政治家や軍人たちを含めれば当時日本の最強の人脈と云える。
最近同じ講談社学芸文庫の宇野浩二のやはり友人作家にまつわるエッセイ集を読んだのだが、どちらも大正期を代表する私小説作家であるのにその味は駄菓子と高級和菓子ほど違う。
勿論宇野の方が駄菓子で、駄菓子は駄菓子なりの旨みがあり、こちらの方が食べ易く、面白いという強みもある。
対し志賀のエッセイは上品で端正なのだが、やはり我が強い。
里見惇(実際は違う漢字)との絶交の理由がどう読んでも理解できないし、芥川や漱石の探偵小説趣味を絶えず批判する。
菓子の甘さはこの程度の甘さなのだ!という主張が控えめな甘さの中にあるのと同じように、我執が志賀直哉には色濃く、確かに芥川・太宰では勝てない胆力である。





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エレガントな象―続続葭の髄から 阿川 弘之

エレガントな象
阿川弘之さんによる、月刊「文藝春秋」の巻頭随筆「葭の髄から」を纏めたもので三冊目。

月刊「文藝春秋」の巻頭随筆は古くは小泉信三や田中美知太郎、阿川さんの前は司馬遼太郎と、

日本の師表

と仰がれる人が筆を執ってきた欄である。


阿川さんは文章がいい。

歴史的仮名遣いを使っているからとかではなくて、正しい日本語でもって、文語、口語を巧みに使いまわして、硬軟自在の内容をより一層豊かにしてくれる名文家なのである。

随筆の内容は皇室から自衛隊、書評から身辺雑事の多岐にわたるけれども、どれをとっても、阿川さんの姿勢にブレがなく、ある時は国を憂えて、あるときは烏の騒音に悩まされ、ある時は友を惜しみ…。

内容の個々については読んでいただいて、いい文章とはこういうものかということともに味わってほしいが、「エレガントな象」というタイトルについては、お嬢さんの阿川佐和子さんの友人でもある檀ふみさんが関わっている。

阿川海軍大尉のご健筆をひたすらお祈り申し上げて擱筆。





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2008年02月27日

鮎の宿 阿川 弘之

鮎の宿
なんとほっとする文章なのでしょうか。

読むものも書くものも聞くものも、すべてが軽くふわふわとしている現代にあって、ひとつひとつの言葉にしっかりとした意味がある文章を読むと、居住まいを正す思いになります。

著者の師、志賀直哉が他界して数年後の1975年に刊行された随筆だそうですが、今の世にあっても十分に通ずる内容です。

こういう作家が、と言うよりも、こういう日本人が、今は少なくなったなぁ、と感じます。背骨に一本ナニかが入っている方たちです。気骨、と言えばお手軽にすぎますね。

須賀敦子、内田百閨A井伏鱒二・・・名随筆家(という言葉があるでしょうか)は数多いて、本読みを楽しませてくれるだけではなく、人生を教えてくれます。

この作品も、足元に光を照らしてくれる作品でした。





ラベル:阿川 弘之
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蛙の子は蛙の子―父と娘の往復書簡 阿川 弘之, 阿川 佐和子

蛙の子は蛙の子
阿川弘之・佐和子さん父娘が、色々なテーマについてお手紙を交わす。

弘之さんってどんな方かしら。でもいきなり行くのは…と思っていたらいい本があったので借りてみたらおもしろかった。
舌戦とは言わなくても、父娘でなければこうは行かないだろうなぁという軽妙さ。

ただ佐和子さんの方は簡単でおもしろくすぐ読めるのに、弘之さんの方は頭を使いながらなので慣れるまで時間がかかった…
すごい知識量。

孔子の言葉はどれも納得。すごいことだわ。

今の世、文豪と言われる人っていないなぁと感じた次第。





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日本の名随筆 阿川 弘之

日本の名随筆
此白澤の図を懐中すれば善事をすすめて悪事を退け山海の災難病患をまぬかれ開運昇進の祥瑞あること古今云伝ふる所也。因而旅中は最も尊信あるべし

靴を投げて 開高健
風景開眼  東山魁夷
時刻表2万キロ 宮脇俊三
最終オリエント急行 阿川弘之
特別阿房列車 内田百
みちの記 森鴎外
壱岐の旅情 佐多稲子
はずかしい旅 江国滋
峠考 山本太郎
砂漠への旅 森本哲郎
近江路の春 山口誓子
山菜の旅 堀口大学
無精な旅人 庄野潤三
ウロウロの旅 壇一雄
博物館めぐり 大岡昇平
北風よ早く来い 堀江謙一
大陸横断オートバイの一人旅 浮谷東次郎
海と空 柳原良平
阿波とお遍路 野坂昭如
ドナウ源流行 斎藤茂吉






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鉄道大バザール P・セルー, 阿川 弘之

鉄道大バザール
旅行記数々あれど、
作者の視点がりっぱ。
つらくっても旅が大好き。





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美酒楽酔飲めば天国 阿川 弘之, 丸谷 才一, 遠藤 周作, 開高 健, 吉行 淳之介, 「世界の名酒事典」編集部

美酒楽酔飲めば天国
酒の本といえば、吉行淳之介大先生の翻訳によるKingsley Amis 「酒について」が大名作ですが、これもすごい。

阿川大先生・開高大先生が酒について語る、たこ焼き小田島先生が駄洒落を飛ばす、埴谷大先生が酒への偏愛を語る、北方謙三先生が薀蓄の髄を極めてぴぴくと髭をうごかす。

「世界の名酒事典」のことは知らん。が、この本は素晴らしい。
この薀蓄本が文庫になったら、15くらい年下の女の子連れてかっこいいレストラン・バーに入ったところでおもむろにこの本開いて、ページ指差しながら世の酒飲みというものについて薀蓄を語る。
是非やってみたい。
ただのヤなオヤジだけど。




ラベル:阿川 弘之
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海軍こぼれ話 阿川 弘之

海軍こぼれ話
海軍さんと陸軍さんの違いをひしひしと感じられるいい本でした。
外部から入った人間にも優しい、何て言われたら、入りたくなっちゃいますよね(ならんか)。
海ぃ〜の男の艦隊勤務、月月火水木金金♪





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酔生夢死か、起死回生か。 阿川 弘之, 北 杜夫

酔生夢死か、起死回生か
対談集。
北杜夫ばりの鬱状態の中で読んだにもかかわらず、ちゃんとにやにや笑えました。
文壇の話は正直分からないこともあったのだけど、ふたりのやりとりの妙味にかなりやられました。

この対談を目の前で見てみたかった!
阿川弘之自身によるあとがきも、味わい深くてよいです。




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二十世紀日本の戦争 阿川 弘之, 中西 輝政, 福田 和也, 猪瀬 直樹, 秦 郁彦

二十世紀日本の戦争
僕の中学生頃に文芸春秋に掲載された対談集。
日清・日露戦争あたりから湾岸戦争までの日本の歩みを五人の識者がそれぞれの見方を戦わせつつ、最終章で今後の日本がどうあるベキか?という問題提起がされている本です。

日本の学校ではなんでこんなに近代史を教えないんだろう?
と疑問を持ちつつ、自分で進んで本を読んだり勉強したりって言う事はしなかった事を反省しつつ、事始めに読んでみました。
解らない言葉はいちいち辞書を引き結構骨が折れました。
ただ、内容が猪瀬さんのあとがきにあるように「知的に愉し」かったので最後までなんとかよめました。

読み終わって思う事は憲法9条をどうするかという問題は難しいけれど、一度自分たちの手で憲法を書き直すべきだという事です。
残念ながら憲法草案を書けるほどの知識がないです。




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人やさき 犬やさき 阿川 弘之

人やさき 犬やさき
すごく斬新で知的刺激に溢れているというのではないけれど、貫禄というのか、亀の甲より年の功をひしひしと感じさせられるような日本語が、ほんのりした雰囲気としなやかさを生み出しているように思います。
自分自身は言葉に対してわりと敏感な方であると信じていても、矢張り「すごく」などと連呼している時点でなまぬるいということを痛感させられました。
文語体も今日の日常生活では触れる機会が殆どないので、却ってその繊細さが新鮮に感じられます。




ラベル:阿川 弘之
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南蛮阿房列車―乗物狂世界を駆ける 阿川 弘之

南蛮阿房列車
外国汽車旅の紀行文です。
汽車旅の大好きな阿川氏ならではで世界を駆け巡っていますが、旅に同行する人々もユニークな人ばかり。

真面目な内容でありながら、人物観察、自然観察の表現が面白く、大笑いする場面も数多くあります。活字で腹の底から笑えるというのは中々ないだけに、ぜひ一読を。





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うちの秘蔵っ子―著名人30名ペット・フォト&エッセイ集 阿川 弘之

うちの秘蔵っ子
著者は早稲田や東大出身の人が多い。
北村薫氏の文章に出てくる試験管は試験官だろう、とか
日本有数の猫好きと自任している、はおそらく自認では?とか
細かな誤字が気になったりする。
(なんせ物を書く著名人が多いので。。。)

どの話も、コンパクトな中に
ペットとそれぞれの作者の空気感が出ていて、とても心温まる。
動物好きにはいい。
作者の色、人柄、空気感が濃く出ている作品集といえる。
阿川弘之さん、さすがです。面白かった。






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乗物万歳 阿川 弘之, 北 杜夫

乗物万歳
 古書店のワゴンセエルにて五十円で購入せり。
本日、別の古書店へ赴くと九百円の値が付いてゐた。

 絶版だと何でも高く売ろうとする商魂には喝!!

 だけど、こんな本を編集したのは多分、中央公論時代のあの御方でしょうなあ。でも、こんなのありなんですなあ。

 冒頭、現在では放送禁止となつてゐる用語が記載されていた点にも注目。





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2008年02月25日

春の城  阿川 弘之

春の城
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
けど、淡々と語られる「あの戦争」。
天皇(先帝)が悪い、東條が憎い、アメリカが憎い、
こんな醜い感情は一切表れてなど来ない。
「誰かの」せいになんかしていない。

原民喜の「夏の花」のように淡々と静かに語られていく。
恩師の、愛する人の惨たらしい死も、感情を抑えて、まるで
必死に涙をこらえるかのように描かれていく。
とても明晰な文体で。

人々に何かを伝えたい、あの戦争は何だったのか。
それは雲をつかむようないびつな文体などでは
できない。絶対にできないのだ。

”よいニュースは小さな声で語られる”
(村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」)。
物語もそうだ。アジテーターの声は絶えても
真摯な問いかけは消えたりなんかしない。





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葭の髄から 阿川 弘之

葭の髄から
東大在学中に学徒出陣させられたとはいえ 阿川は戦地では「大尉」 そのまま終戦を迎えるが終戦あくる翌年には帰国が適っている
企業家の家に生まれ 東大を卒業し 志賀直哉に師事し 作家となり 子どもは法学者に そして作家になった 彼は本当の「選良」である
もしそこに戦争がなかったら ものを書くための鬱屈さえももたない人種だったかも知れない

漱石や鴎外など 明治の文豪と呼ばれるひとびとの多くはこうした「良家の子女」であり 「選良」でさえあるが このへんの人々が少々斜め上から語った「庶民のおはなし」はどこか滑稽だ
阿川の雑文には そうした古く懐かしい臭いがプンプンする
「糞尿のはなし」や 「ケンカ友達のはなし」などしてみても どうにも育ちのよさは隠せないような。。。

世間を知らずに老いていった「おぼっちゃま」の戯言と言い切ってしえば なるほどそのままだ
しかし 彼ほど「憂国」を感じる作家を久しぶりに確認した 生存していてよかった
読書の習慣もなく もちろん文章を書く技量ももたなかった 亡き祖父に読んで聞かせたかった文章が沢山見つかった









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志賀直哉 阿川 弘之

志賀直哉
 何年か前に奈良に旅行したとき、高畑の志賀直哉旧居を訪れ、春日山の原生林を臨む環境と、家族への慈愛に満ちた間取り、高畑サロンの談笑が聞こえるようなサンルームを印象深く見たことがある。今年になって、尾道で再び、志賀直哉旧居を訪れ、ふと、この二つは、志賀直哉の人生の中でどのような位置付けにあったか、が気になった。
 そう言えば、10年ほど前に岩波書店から出た「志賀直哉(上)」を買ったまま、埃を被っていたのを思い出して、読み出したら、これが面白い。志賀直哉の作品はほとんど読んだことはないが、直哉の末弟子だった阿川弘之の軽妙洒脱な筆致が読む者を惹き付ける。
 偶然だが、尾道は「暗夜行路」の構想を練り始めた場所であり、高畑は、脱稿した場所であることが分かった。武者小路実篤、柳宗悦、東山千栄子、芥川竜之介、小林秀雄など、錚々たる人物が絡む語り口の妙も読みどころ。毎日出版文化賞受賞。






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国を思うて何が悪い―一自由主義者の憤慨録  阿川 弘之

国を思うて何が悪い
自分にはピンとこない部分も凄い多いけど
それでも忘れてしまった何かがここにあると思います。

今の日本人に捧ぐ、愛国心というもの。
 



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高松宮と海軍 阿川 弘之

高松宮と海軍
本書は「『高松宮日記』編纂記」と「海軍を語る」から構成され、前者は『高松宮日記』(全8巻)の編纂から刊行までの経緯を様々な談話を交えつつ記され、後者は日本海軍の気風や伝統について軽快に記されている。

とりわけ、井上成美元大将が「海軍のいけなかつたところを、どんどん書いとけ。構ふもんか。自由な批判が無くて何が海軍だ」と述べているところや高松宮宣仁親王が「海軍の美点長所ばかり書いてゐても、後世のためにはならないからね。むしろ、欠点短所を書き残しておくと、それが後世の役に立つ。これからは、海軍のよくなかつた面も堂々と書き給へ」と述べているところは印象深い。諸手を挙げて賛美することだけが、海軍の「愛し方」ではないということをひしひしと感じる。

ちなみに「付録」の「次室士官心得 抄」と「海軍士官として心掛くべき主なモットー」も面白かった。堅苦しい史料や文献の精読に疲れた時に一息入れて読んでみると少し気分が和むのでオススメしたい。




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軍艦長門の生涯  阿川 弘之

軍艦長門の生涯
第一次世界大戦後の連合艦隊旗艦として生まれた戦艦です。第二次世界大戦でも生き残りましたが、敗戦によってアメリカ軍に引き渡され、原爆実験艦としてその生涯を終えました。
この本では戦艦を通じてその乗員の生き方、当時の海軍および政府の国際感覚、第二次世界大戦に進む日本の様子などが生き生きと描かれています。
さらに殺伐とした戦争の場面ばかりでなく、軍艦内での食い物泥棒、いんちき天気図など笑える場面も随所に盛り込まれています。






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故園黄葉  阿川 弘之

故園黄葉
チェーホフの家を訪ねる”ヤルタへの船旅”などの紀行文、いくつかの推薦文や葬儀委員長挨拶そして祝辞、昭和50年代中頃NHKで放映されていた「羊のうた」原作者の”直井潔追悼””眠れ孤狸庵””わが友 吉行東尋坊”など近しい作家の追悼文など魅力ある大人の世界が広がる。





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サアカスの馬・童謡  安岡 章太郎, 遠藤 周作, 阿川 弘之, 小川 国夫, 吉行 淳之介, 北 杜夫

サアカスの馬
ダメな主人公が見たひとすじの光。

このダメ主人公がとても共感持てます。
自分に投影してしまうんです。
自分に自信がなくなったら、是非とも読むべきです!





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日本海軍、錨揚ゲ! 阿川 弘之, 半藤 一利

日本海軍、錨揚ゲ!
「軍隊なんて、所詮殺人者集団だ」っていう固定観念(ある意味間違ってはないですけど)を少しは変えてくれるかなっていう感じがしました。途中に海軍入試数学抜粋があるんですけど、それがまた簡単そうで難しい。




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末の末っ子 阿川 弘之

末の末っ子
ノンフィクションに近い内容だと思いました。実際の家族や友人が仮名でばしばし登場してきます。その中には小説やエッセイを書いている人も含まれるので、それらを読んでいるとかなり楽しいです(知らなくても十分楽しいと思います)。横の繋がりが嫌いじゃなければ、という感じ。

それで、主人公は作者自身だと思われるけど、阿川佐和子さん(著者の娘)のエッセイから感じた厳格な父のイメージはあまりなくて、憎めない親父といった風で、茶目っ気たっぷりの文章でした。サザエさん一家が近いです。

30年ぐらい前の舞台なので、この時代の忙しさは今に比べたら大したことないなーと思ってしまいました。うらやましいですネ。
(でも自分は6人も食わせられない・・・。)





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魔の遺産  阿川 弘之

魔の遺産
 阿川弘之の代表作のひとつでありながら、なか
なか文庫化されなかった作品。被爆から8年後の
広島を舞台に、原爆の苦しみを乗り越えて懸命に
生きようとする人々の姿を、ルポライター・野口
三吉の目を通して描く。





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雲の墓標  阿川 弘之

雲の墓標
2006年10月21日付の日経夕刊「文学周遊37」で
取り上げられていたのをきっかけに読んでみた。

京大出身の学徒特攻隊員の手記として文章は綴られている。

これまでも何冊か戦争物を読んできたが
ここでは単刀直入なまでに現実的な日々の内容が書き綴られている。(腹が減った、風邪引いた、天婦羅が旨かった等々)
それに戦争の方向性に対する素朴な庶民感覚も。

本当にそのように考えて飛び立っていった人々がいてもおかしくないと思った。




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論語知らずの論語読み 阿川 弘之

論語知らずの論語読み
既に30年以上前の書籍ですが、第三の新人として世に出た阿川弘之・遠藤周作・吉行淳之介がそれぞれ自由闊達に交友している様が非常に楽しい本です。
多少、論語の知識が有ったほうが、より面白いかなと思うくらいです。





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井上成美  阿川 弘之

井上成美
読んでおくべきです。

海軍左派トリオ自体も興味深いんですが
その人事を行った中心人物も調べて行きたいところ。





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日本海軍に捧ぐ 阿川 弘之

日本海軍に捧ぐ
キスカ島撤退の作戦で、霧がかからないのを気象長のせいにしたり、皮肉を言ったりする。
論理的に関係無いことを感情で結びつけてしまう合理的で無いところが日本人っぽいなと思った。
広瀬武夫の早すぎる最期は壮絶であり、衝撃的でした。広瀬武夫といえば、後世「軍神ブーム」の象徴として扱われたなどのイメージが強いかもしれません。ですが、それらのこととは別にしても上に立つ者として責任を果たそうとする姿やその精神には脱帽します。





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食味風々録 阿川 弘之

食味風々録
もうひとつ、気になるのは阿川氏のマティーニ。
 阿川氏が自分で手がける料理はステーキくらいだけれどアメリカ遊学中に覚えた「マティーニ」は、どこのバーより旨いと自慢する。
 40数年来ご馳走した方々に感心され、お代わりを所望されたという自信作。
 
 私はお酒なんでもOKですが、カクテルはマティーニがいい。
 マティーニ大好きだけれど美味しく出すところ少ない。
 
 阿川氏の作り方・・、これはもう、読んでいただくしかない。
 旨そう・・・と私の咽喉の奥がヒリついたんだから・・。

 そして題のつけ方の巧みなこと、内容も裏切らない。

「食味ぶうぶう録」大人の味、イイナ。





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山本五十六 阿川 弘之

山本五十六
ワシントン・ロンドンで日本の海軍上層部が如何に軍縮について考えていたかがよく判りました。

「強硬論者には感情面を抜きにしても、強硬論者としての主張と論理が会った。それを聞かなくてはならない。」
「結果が出た今日では、戦艦中心の大艦巨砲思想こそ時代に即さない非現実的な感傷論であった・・」
など歴史の後知恵者となって、山本と対立する者を非難するのでなく全てを公平に書かれているように思います。

何度も生まれ変われるなら一度「連合艦隊司令長官」になってみたいですね。








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断然欠席 阿川 弘之

断然欠席
旧仮名遣いで書かれているもすんなりと読める。
内容的にも面白いエッセイ




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米内光政 阿川 弘之

米内光政
尊敬している歴史上の人物です。

賛否両論があると思いますが、終戦及び海軍の幕引きを担った人物です。

海軍左派と言われ、海軍大臣、総理大臣として三国同盟に反対し、ナチスドイツ式統制経済にも反対。

その為に陸軍により倒閣されますが、大戦後半には海軍大臣として終戦に尽力する。

米内 光政伝は多々有りますが、読み易さでは一番でした。

本書で米内 光政に興味を持たれたら、実松 譲氏の著書を読まれたら良いと思います。





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きかんしゃやえもん 阿川 弘之, 岡部 冬彦

きかんしゃやえもん
小さい頃に何度も読んだ記憶のある絵本。
最近、また読みました。
やえもん、最初はこわい。
顔からして、いじけモードMaxだしね・・・。
でも、最後は笑顔なやえもんが見れて良かった。





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2007年04月29日

壬生義士伝 下 浅田 次郎

壬生義士伝『おのれらは貧と賎とを悪と呼ばわるか。富と貴とを、善なりと
唱えなさるのか。ならばわしは誇り高き貧と賎とのために戦い申す。
断じて、一歩も退き申さぬ』と官軍となった薩長軍へと一人
斬りかかって行った吉村貫一郎。

斬りかかってくる者があれば、わしが一人残らず倒す。
奴の体には指一本触れさせぬ。『吉村、死ぬな』といった斉藤一。

脱藩者の息子と蔑まれた貫一郎の息子嘉一郎と
組頭と足軽という立場にありながら親友であった大野千秋との
別れの手杯。

家族への愛、故郷盛岡への愛、教え子たち、隊士たちへの愛
が惜しみなく貫一郎の言葉から溢れます。

石を割って咲かんとする花、北風に向って咲く花。
春に先駆けて北風に向って本当に咲く辛夷(こぶし)を見た時、
思い出して涙が溢れました。この物語を読んでから
盛岡の石割桜を見ると本当に感激しますよ。
吉村さんという名前の人を見ると『吉村死ぬなー』とつい叫びそぅになります。
壬生義士伝 下

ラベル:浅田 次郎
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さみしさの周波数 乙一

さみしさの周波数
「おまえらいつか結婚するぜ」小学生の時、不思議な予知能力を持つクラスメイトにそんな予言をされた僕と清水。それきり僕たち2人はなんとなく気まずくなってしまい、ろくに言葉を交わすこともなく別々の高校へ。やりたいこともなく、高校を出てからもフリーターとして空ろな日々を送っていた僕だったが、気がつくと心の中ではいつも清水のことばかりを考えていた。
(「未来予報」)

その他「手を握る泥棒の物語」「フィルムの中の少女」「失はれた物語」の計4編を収録している。悩みを抱えていたり絶望している人をそっと癒してくれる女性が登場するというのが共通点か。さすが乙一という感じでどの話もなかなか読ませてくれたが、一番好きなのはやっぱり「未来予報」だな。主人公の鬱々とした気分と、過去に対する後悔なんかが自分の10代後半から20代序盤と重なって他人のような気がしなかった。ヒロインがあまりにも理想化されすぎているし、ラストにひねりがあるわけでもないんだけど初めて乙一で「切なさ」というのを感じたような。

ラストの「失はれた物語」もよかった。セリフが少ない分しみじみとくるものがある。著者の才能を一番感じさせられた話はこれ。「フィルムの中の少女」は最初鈴木光司の「リング」っぽく、いかにもホラーといった感じだったが、最後はやっぱり切ない系のいい話になっていた。


さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫)

ラベル:乙一
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2007年04月28日

壬生義士伝 上 浅田 次郎

壬生義士伝
混乱と矛盾の理不尽だらけの時代に「義」を見失うことなく
生きた新撰組隊士・吉村貫一郎のお話。
武士道の建前に反しながら、その実誰よりも誇り高い武士。

まさに浅田次郎の男像そのもの!
「強くて優しくて辛抱のきく人間」
「人の痛みのわかる・人を守れる人間」
何かを貫こうとすれば不器用な生き方になるけど、
大切なもの・譲れないものがあるってすごく人間くさくて誠実な生き方。

色んな視点からの回想録で話し手の調子が上がったり
横道それたりが面白くてぐいぐい読めるし、時代や貧富のことも
背景にのぼるので主人公に対する目線に幅を持てる。
そして相変わらずやくざ色の強い人の回想は文章が生き生きしてる。

自分がどうあるべきかを考えさせてくれるすごく良い本。


壬生義士伝 上

ラベル:浅田 次郎
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2007年04月19日

単純な生活 阿部 昭

単純な生活
短篇小説家・阿部昭の長編小説。
初めて長編を読むが、400頁、1980年から1982年迄湘南に住む著者の身辺雑記で、特に長編としての骨格があるワケでもなし、エピソードの数珠繋ぎ・描写のある日記・過去の回想、である。
私小説とも云えようが、なにより私にとって、この時代が好きだ。
文壇的には村上春樹や村上龍が台頭していた時期で、目立ってはいないがバブル景気で、それでも明治から戦前の香りをほんのり残していた我が小学校低学年の時代である。
今の私は本やDVDが並ぶフローリングに独り、暮らしているのだが、それはこの子供時代のいかにも家族とか世帯という子供が張ったアニメキャラのシールが付いた家具や散らばる洗濯物、夕方の役所の放送や子供の遊び声などから遠く離れてみたかったからかもしれない。
この私の故郷が信じられないくらい遠くなってしまったと実感できた唯一の小説である。
だが同時にある種の普遍性もあり、こういう街で家庭を築くとこういう世帯をもうけるのだということを最近昔から友人夫婦の家に行ってつくづく実感した。
どんなに人や女や恋愛が変っても家族の姿はこの頃から変らぬ。
ネットやおたくと云っても我々はここから産まれたのである。
そういう意味で重要な戦後文学である。

私は男の子がロックスターに憧れるように戦後文学の武田泰淳や花田清輝、アメリカ<失われた世代>のフィッツジェラルドやフォークナーを好むが、一方で、この山川方夫〜阿部昭〜佐伯一麦の生活感漂う珠玉の小説を愛す。
考えれば阿部の死後、このライン最後の佐伯は阿部の忠実な後継者と気付く。
家庭の不和から文学へ行ったこと、その始まりが文豪や大家ではなくルナールであったことも含め。
ところが想うのだが、こんな渋いものを書いた阿部は当時花形の職業TVマンで、しかも60年代のTBSで働いていた。
だからネット業界の人間が前代のジャンルである映画や小説で玄人を唸らすような作品を創ってもおかしくない。
というか今読みたい新人の作品とはそんなものだ。

単純な生活 (講談社文芸文庫)

ラベル:阿部 昭
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2007年04月18日

麻雀放浪記 1 青春編 阿佐田 哲也

麻雀放浪記
タイトルから、読者層が決め付けられてしまいそうで
そこがもったいないなぁとおもう。
実際私も、麻雀は好きだけど、「どっぷり」ってのもどうかと思ったので
なかなか手が伸びなかった。

戦後のカオスな東京を舞台に
博打で日銭を稼ぐろくでなしの男たち。
人情なんて甘っちょろいものは無いに等しい。
だからといって、殺伐としているわけでもない。
そして、なんだかそのアウトローな生き様がかっこいい。
まゆみの気持ちはわかりたくないけどわかる。
ほんとどーしょーもない。特にドサ健。
ある意味男から見た男の理想形なんだろうが
女にしてみたらこんなのにだけは引っかかりたくない・・・。

よく麻雀(ギャンブル)って人生になぞらえられるけど
こうやって、男たちの生き方と照らし合わせながら読んでいくと改めて納得。

「トップを取らなきゃ勝ちとはいえない。」
「負けは死と同意」
「イカサマは見破れない方が悪い。」

ココに出てくるのは、ほぼイカサマありきの麻雀。
やられたらやり返す。
理屈なんかこねない、その潔さに乾杯!


麻雀放浪記(一) 青春編

ラベル:阿佐田 哲也
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2007年04月17日

うなぎ丸の航海 阿井 渉介

うなぎ丸の航海
「アフリカにょろり旅」
ウナギは新月の夜、マリアナの海山で産卵する

の東京大学海洋研究所ウナギグループの活動に同行した作家・阿井渉介による冒険ドキュメント.
終始笑いながら読んだけど、静かなラストに感動、鳥肌が立ちました.

うなぎ丸の航海 (講談社文庫)

ラベル:阿井 渉介
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2007年04月16日

和宮お側日記―文庫書下ろし/長編歴史小説 阿井 景子

和宮お側日記
和宮のお側に仕えた女官(女官とはちょっと位が違うかな?)の日記より書かれたもの。

篤姫は和宮からみて姑にあたります。

その辺も、篤姫側の本と、和宮側の本と視線を変えて読めんたのが良かった。

当初仲が良くなかった理由も納得。

でも2人とも、そんなに慶喜嫌わなくても。。と思ってしまった。

和宮お側日記 (光文社時代小説文庫)

ラベル:阿井 景子
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2007年04月06日

暗いところで待ち合わせ 乙一

暗いところで待ち合わせ
視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。
駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。
犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。
他人の気配に怯えるミチルは、
身を守るため、知らない振りをしようと決める。
奇妙な同棲生活が始まった―。書き下ろし小説。


ずっと気になっていた作家さんだったけど
今回、初めて乙一さんの作品を読みました。
他人とうまく接する事ができない2人が
少しづつ変わっていく心情描写もとても巧みで
とても静かで暖かい、穏やかなお話でした。

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

ラベル:乙一
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2007年04月02日

ギリシア神話を知っていますか 阿刀田 高

ギリシア神話を知っていますか
今ではすっかり有名になってしまったけど阿刀田高氏の「・・・を知っていますか」シリーズの古典解説本。
いちばん最初はこの「ギリシア神話を知っていますか」なのです。

すべて持ってます。
せっかくだから自分のためにもここで整理してみましょう。

・ギリシア神話を知っていますか
・アラビアンナイトを楽しむために
・あなたの知らないガリバー旅行記
・旧約聖書を知っていますか
・新約聖書を知っていますか
・ホメロスを楽しむために
・シェイクスピアを楽しむために
・コーランを知っていますか
・エロスに古文はよく似合う(今昔物語)
・楽しい古事記

で、「ギリシア神話を知っていますか」

そもそも私がギリシア神話に興味を持つようになったきっかけがこの本。
それ以来25年、すっかり嵌ってしまった。
その奥深さ、多様性、普遍性・・・。
私の興味の対象にいつも大きく拘ってくることとなる。

絵画、映画、音楽、文学、語源、植物、星、旅行・・・。
別にギリシア神話なんて知らなくたって全然不便はしない。
でも知っていたほうが断然世の中が楽しくなる。
世界が広がる。興味が尽きない。

そういう意味でこの本はギリシア神話の入門編。
ギリシア神話の全てが書かれているわけではない。
ギリシア神話の楽しみ方が書いてある。

この本で興味を持った私はその後ありとあらゆるギリシア神話関連本を読み漁った。
でもきっかけはこの本。
この本には随分感謝している。
大袈裟かもしれないけど私の人生が少し変わた。
ものの見方や考え方がこの本で変わった気がする。



ラベル:阿刀田 高
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2007年04月01日

爆れつハンター あかほり さとる, 臣士 れい

爆れつハンター
漫画全巻そろえたね〜。
帰ってきた爆れつハンターも買ったし。
小説からでて漫画やらアニメ化やら人気でた作品。
実はこれは小説出る際に3爆シリーズとしてでました。
「爆れつハンター」「爆炎キャンパスガードレス」「メイズ爆裂時空」の3つです。
ぽりりんことあかほりさとる先生好きなんで全部買いましたよw
ガードレスはわりとすぐに消えたな〜・・・。
3爆シリーズといってもまったく話のつながりありません。
同時期に3作品出したってだけですよ。
古本屋にいっぱいあるはずなのでチェックしてみましょうw



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