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2008年09月11日

遠い太鼓 村上 春樹

3年間、村上氏は日本を離れ、ヨーロッパで暮らしていた。
その間に、「ノルウェイの森」、「ダンスダンスダンス」の2冊の長編を書いている。
この本では、その小説を海外滞在中に書くにあたっての、裏話が書かれており、とても興味深い。
また、旅行記としても、ギリシャ、イタリーを中心と書かれており、とても当地に行ってみたくなる。村上氏は白人がどこの国の人は大方わかるようで、人を見る目・観察力が長じていることも、この小説からわかってくる。
このレビューでは、1.2つの長編を書いていた裏側の紹介2.旅行記3.人間観察についてまとめてることにした。

冒頭、はじめにという章において、何故村上氏が旅に出たのか説明がある。
元々は40という節目の年齢を迎えるにあたり、精神的な組み換え(村上氏の言葉)が行われる前に、何らかの仕事を残しておきたかったということで旅に出たとのこと。
でも、太鼓の音が聞こえて、旅に出たくなったということの方が自分にとっては説得力がある。

『ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきた。
ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音はひびいてきた。
とても微かに。
そしてその音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。』


1.小説の裏側
この2冊が日本で書かれていたら、多分かなり違った色彩を帯びたものになっていた
と本人も書いている。ヨーロッパに滞在していたからこそ、書かれた作品であり村上氏の思いも深く入っていったのであろう。


@ノルウェイの森の裏側
 シシリーのパレルモに 1ヶ月ぐらい滞在したときに、この小説の6合目まで当地で書かれた。マフィア、絶え間ない騒音、危険な車と外出もままならない環境で書き始めた。このような散歩もままならない環境で小説を書き続けるのは辛かったようである。冬の温かさも辛い原因だったようだ。次にローマに戻り、第一稿が完成する。第二稿が完成したところでノルウェイの森というタイトルが決まった。
この小説では死が特徴的である。「生は死の対極としてではなく、その一部として存在している」というテーゼが幾度となく引用されている。遠い太鼓の『午前3時50分の小さな死』という章
で、死について村上氏は語っている。小説を完成させる前に死ぬことを恐れている。朝キッチンでやかんに水を入れ、コーヒーを飲むために電気ヒーターのスイッチをオンにする。ここでさえ、彼は祈る。「お願いだから、僕をもう少し生かしておいて下さい。僕にはもう少し時間が必要なんです」この小説を書き上げるまでになんとか生かしておいてほしい、ただそれだけなのである。ここに村上氏のこの小説への思いが感じ取れる。やはり、このノルウェイの森は、熱くて深い思いがこめられた作品なんだ。

この章のラストのセンテンスが印象的だ。ノルウェイの森を象徴するかのようである。

「僕は小説を書くことによって、すこしづつ生の深みへと降りていく。
小さな梯子をつたって、僕は一歩また一歩と下降していく。でも、そのようにして生の中心に近づけば近づくほど、僕ははっきりと感じることになる。そのほんのわずかな先の暗闇の中で死もまた同時に激しいたかまりを見せていることを」  

Aダンスダンスダンスの裏側
 ローマのマローネさんの家(貸家)で書き上げられた。この家は日当たりが悪く、じめじめとした家だった。実際は12月17日から書き始めた。ダンスダンスダンスでは書き始める前にタイトルが
決まったようだ。このタイトルはビーチボーイズの曲から取ったと思われているようだが、本当
はザ・デルズという黒人バンドの古い曲からのようである。ノルウェイの森は村上氏にとって書いたことのないタイプの小説であったためあれこれ考えて書かれたようだが、ダンスダンスダンスは羊をめぐる冒険の続きということもあり、のびのびと好きに書いたようだ。この小説を書いていたローマの冬はとても厳しく、備え付けの暖房器具だけでは足りなくて、石油ヒーターまで買い込んで暖房したようだが、それでも部屋全体は終始ひやっとしていて、嫌な寒さだったようだ。
あまりにも寒いので、オーバーコートを着て机に向かい、ワープロのキーを叩き続けた。
そのせいで、ダンスダンスダンスの中にハワイのシーンが出てくるというのも、とても面白い。
寒さをしのぐために、ハワイを思い浮かべ、暖かくなれるような気がしたのだ。
熱帯の太陽の下に寝転んで、ピナ・コラーダを飲んでいるという文章を書くことで、暖まったのだ。
最終的に書き上げるのは、ロンドンである。

2.旅行記
 旅行記は遠い太鼓の中心を占めている。ここは是非、本を読んで楽しんでもらいたい。
ギリシャに始まり、ローマ、ヘルシンキ、ロンドン、オーストリアと訪れている。
各地での、ホテル事情、住居事情、レストラン、ランニング事情と興味はつきることがない。
ギリシャのクレタ島、ハルキ島など島事情も詳しい。僕が印象に残っているのは、イタリアのワインがおいしい、トスカナ、キャンティー地方だ。
小売はしていないけど、紹介されてワインを買いに行った、インノチェンティさんの家のワインが絶品なようだ。葡萄園の真ん中にあるホテル「雉鳩亭」には是非宿泊してみたい。

3.人間観察
バックパッカーから見る、国籍の見分け方が面白い。極端なイタリア人嫌いは別としても、ドイツ人、カナダ人、イギリス人などの見分け方が書かれている。村上氏はナンパな野郎が嫌いなのかな?
ドイツ人・・世界1旅行好き。タフな装備をしている

カナダ人・・世界1暇
オーストラリア人・・カナダに次いで暇そう
イギリス人・・・顔色が悪い
  
カナダ人やオーストラリア人はリュックをさげていて、国旗を縫い付けている。

北欧人はドイツからタフさをとって、空想的にした感じ

すばしっこそうで、皮肉っぽい顔つきがフランス人

イタリア人ってね。食べること、喋ること、女を口説くことを除けば、あまり一生懸命に何かをやるってことないんです。



おまけ

南ヨーロッパでランニングをすることの問題点  P224
愉快なイタリアの天気予報 p359



ラベル:村上 春樹
posted by クロルデン at 21:06 | TrackBack(0) | ま行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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